ラブ・マイナス・ゼロ

uizcatchthebeat2007-12-15

紙ジャケ再発の
話を続けます。
起きてても寝てても
背中痛くて
唸ってた12日は
とても生中継で見てられず
後日録画を見た
甲斐バンド"2007 ONE NIGHT STAND@品川"。
今回、オリジナルアルバム紙ジャケ復刻を記念しての
再結成という触れ込み。
ただ86年に解散以降も、
96年、99年、01年と断続的に再結成しての
ツアーやリリースがあったし
甲斐のソロ活動時も
バンド時のレパートリーはさんざ披露されてたわけで
あんまり感慨が無いというか。
2004年にオリジナルメムバーだった大森信和氏が亡くなっていることもあり
そこには「甲斐バンド」自体が息づいてるというよりは
メムバーと客がそこに込めた思いが集積してるという印象だった。
たくさんのライブアルバムを残したバンドだし
今回の披露曲も全盛期と殆ど変わらない、
となれば
どうしても比較して聞いちゃうわけで。
甲斐の、54歳にして20代と声質があまり変わらない、
というのはそれだけで脅威だとは思うが
かえって
声量や声域の衰えが余計目立つというか。
その意味では
老いて(失礼)なお
凶暴なギターで大森氏の分も担った
田中一郎の奮闘が心に残った。


甲斐バンドは74年結成。
俺もさすがに70年代の活動は後追いで知ることになるが
歴史的に、日本の洋楽ロックの受け入れられ方
−『ミュージック・ライフ』誌に代表される"長髪ロッカー"のアイドル視−
とリンクしてたのだろうな、と。
今ならゴスな皆さんとパンクやヴィジュアル系の繋がりがあるように。
古典的な少女マンガの記号が
初期甲斐バンドには結構見受けられる。
80年代はロック産業の巨大化とも歩を合わせるように
そうした志向性は薄まってくんだけども。


音楽的にはしばしば指摘されるStonesを初めとした洋ロックの換骨奪胎。
これがパクリと唾棄するには惜しい、
謡曲、フォーク的な、
日本人好みの絶妙なメロディの改編。
加えて歌詞に登場するのは
恋人に裏切られた男だったり
離婚寸前のカップルだったり
世の主流に押しつぶされそうな市井の人々だったりで、
その多くが苦い味わいのもの。
それが単なる負け犬の恨み節や
陳腐なプロパガンタに堕せず
状況描写にとどめる辺りが良かった気がする。


さて。
俺がリアルタイムで甲斐バンドを意識して聞いたのは
80年代、
特に83年のコレ

THE BIG GIG [DVD]

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前後。
新宿副都心、都庁建設前の都有地を使って開催された
野外コンサート。
映像は今見ても相当カッコいい。
今回、
紙ジャケ再発でこの時期のオリジナルアルバムも出たわけだが。
いわゆる「NY三部作」。
虜-TORIKO-(紙ジャケット仕様)

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GOLD(紙ジャケット仕様)

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LOVE MINUS ZERO(紙ジャケット仕様)

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NYのPower Station Studioで
レコーディング・エンジニアBob Clearmountainによって完成された
当時のUSメインストリームと寸分違わぬ音像を
現実化した3枚のアルバム。
Bob Clearmountainが如何に偉大かについては
ポピュラァ音楽史に少しでも興味があれば説明不要、
知らんでもググれば自明ですが。
今でこそラップトップで名作も生めちゃう世の中だけど
こちらの記事にあるような業績
が如何にデカいのか改めて。
また、この時期にこのプロジェクトを実現させた
甲斐の判断力、行動力も評価されるベキでしょう。
結果、これらのアルバムは80年代の洋ロッククラッシックアルバムと共に
俺(に限らず多くの音楽好き)の棚に収まっております。



この時期の世界観は
甲斐のハードボイルド趣味が全快で
カポーティやチャンドラーの参照が多くて
その点でも好みだったな。
ラブ・マイナス〜に至っては
収録曲をタイトルにした短編集が出版されたくらい。
大沢在昌船戸与一北方謙三・・・。
こういう小説と音楽のリンクてのも最近少ない。
え、ライトノベルケータイ小説があるって?


(*゚д゚) 、ペッ